2026年02月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2026年02月

老化や再生能力の低下は支持細胞の劣化から始まる インド

インド科学技術省(MoST)は1月13日、インド科学技術庁(DST)傘下のアガカール研究所(ARI)の研究者らが組織の老化や再生能力の低下は幹細胞そのものではなく、幹細胞を取り巻く支持細胞の劣化から始まる可能性があることを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Stem Cell Reportsに掲載された。

健康的な老化は世界的な課題であり、加齢に伴う組織機能の低下を遅らせる仕組みの解明が求められている。本研究では、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の卵巣をモデルに、生殖幹細胞が長期間機能を維持するための分子機構を調べた。

研究チームは、生殖系列幹細胞が細胞内のリサイクル機構であるオートファジーが極めて低い状態でも維持される一方で、隣接する支持細胞であるキャップ細胞は、長期的な生存と機能維持にオートファジーを強く必要とすることを突き止めた。キャップ細胞でAtg1、Atg5、Atg9などのオートファジー関連遺伝子を選択的に停止させると、細胞に損傷が蓄積し、構造が崩れ、幹細胞を支えるための重要なシグナルを送れなくなった。その結果、幹細胞自体は本来の強さを保っていたにもかかわらず、周囲の微小環境が崩壊したことで、最終的に組織から失われた。

(出典:いずれもPIB)

この結果は、老化が個々の細胞内部の損傷によって進むという従来の考え方に一石を投じ、細胞同士の関係性からなる「細胞集団」として老化を捉える重要性を示している。同一組織内でも細胞種ごとにオートファジーへの依存度が異なることを実証することで、老化対策には組織全体を視野に入れた戦略が必要であることが示唆された。

本研究はARI発生生物学グループのキラン・スハス・ニランゲカル(Kiran Suhas Nilangekar)氏とブペンドラ・V・シュラヴェジ(Bhupendra V. Shravage)博士が主導した。得られた知見は、哺乳類の腸、皮膚、筋肉など、類似した幹細胞ニッチ構造を持つ組織の老化研究にも応用できる可能性がある。研究チームは今後、支持細胞のオートファジーを標的とした介入によって、加齢に伴う再生能力低下を抑えられるかどうかを検証する予定である。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

  • アジア・太平洋総合研究センター
  • Science Japan
  • 客観日本
上へ戻る