インドの物理研究所(PRL)の研究者らは、チャンドラヤーン3号の着陸機ビクラムによる月面での小さなジャンプが、月の南極域の表層土を剥ぎ取り、下に隠れていた脆い土壌層を露出させたことを示した。科学誌nature indiaが5月25日に伝えた。研究成果は学術誌The Astrophysical Journalに掲載された。
2023年9月、ビクラムは短時間エンジンを噴射し、月の南極域の地形上を約0.5 m跳躍した。これは工学的制御の実証にとどまらず、月面土壌の上部表層を剥ぎ取り、その下に隠れていた層を明らかにする結果となった。
アーメダバードのPRLの研究者らは、着陸機の画像とChaSTEプローブの温度データを用い、ジャンプによって月面がどのように攪乱されたかを分析した。着陸機はこの操作中に北西方向へ約50 cm移動し、わずかに回転した。一方、エンジン噴流は緩い表層土を3 cm近く吹き飛ばした。
アニル・バルドワージ(Anil Bhardwaj)氏とK・ドゥルガ・プラサド(K. Durga Prasad)氏が率いる研究チームは、攪乱された表面の下に層状構造を見いだした。上部の土壌層は比較的締まり、熱をより効率よく伝えるため、極寒の月夜には急速に冷えた。より深い部分の月レゴリス(月の表面を覆う砂や岩石の破片)は緩く多孔質で、熱をより長く閉じ込めていた。
今回の成果は、将来の有人探査や水氷採取で重要とされる月南極付近で、月面土壌の性質がわずか数cmの範囲で変化し得ることを示す初の直接観測例の一つである。プラサド氏は「本研究は、月レゴリスの性質におけるこのような局所的変化を初めて直接観測したものです」と述べ、今回の結果は将来のミッション、居住施設建設、水氷採取に役立つ可能性があると付け加えた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部