国全体のデータ指揮本部の確立など4つの期待効果 韓国データ基本法、来春施行

2021年11月04日

林 茂根 (YIM MOOKEUN)

林 茂根 (YIM MOOKEUN):
(韓国研究財団 日本事務所 所長)

<略歴>

1976年韓国ソウル生まれ、韓国 延世大学校卒業、同大学院修了。
2006年韓国学術振興財団(KRF)入り。2009年韓国研究財団(NRF)に改組。
2020年11月から韓国研究財団 日本事務所長に就任。

データ基本法の目的

データから経済的価値を生み出し、データ産業発展の基盤を造成して国民の生活の向上と国の経済発展に貢献することを目標としている。

データ基本法の推進過程

韓国政府は、データ産業発展の基盤を造成し、データ経済活性化のための「データ産業の振興および利用促進に関する基本法(データ基本法)」を来年4月から本格的に施行する。関連法案は、これまで当該業界から必要性が提起され続ける中、昨年12月に法案が発議され、今年9月に国会で最終議決され、法の公布案が今年10月12日の国務会議で議決された。

データ基本法の主要内容

データ基本法は、将来の成長を牽引する中核産業であるデータ産業に関連し、データの生産・取引・活用などを促進し、関連産業の予測可能性を高めるなど、データ産業発展の制度的基盤を整備するために制定された法であり、その主な内容は、国務総理所属国家データ政策委員会の設置、データの生産・結合・活用促進などのための施策の推進、データの品質管理および価値評価体系の構築、データの流通・取引体系の構築、データ専門人材の育成、中小事業者への支援、国際協力などであり、データ産業の育成全般に関する内容を盛り込んだ世界初の法案という点で意味があるといえる。

<データ基本法の主要内容>
区分 主要内容
目的・定義の規定 1
(第1条、2条)
o 法の目的を、データから経済的価値を創出し、データ産業発展の基盤を造成して国民の生活の向上と国家経済の発展に貢献することと規定し、データなどの関連用語を定義する
データ産業振興基本計画の策定
(第4条)
o 政府は、データの生産、取引および活用を促進し、データ産業の基盤を造成するために、3年ごとにデータ産業振興基本計画を策定する
国家データ政策委員会
(第6条)
o 公共・民間のデータ政策を総括する機構を設置(国務総理委員長)し、△基本計画の策定、△データの生産、取引および活用に関する政策・制度改善事項、△データ産業振興関連計画の総括・調整を審議する
データ資産の保護
(第12条)
o 人的・物的に相当な投資と努力により生成した経済的価値を有するデータ(「データ資産」)を保護する
※ 無断で取得・使用・公開、他人に提供する行為、正当な権限なくデータ資産に適用した技術的保護措置の除去などを禁止する
データ価値評価支援、品質管理
(第14条、第20条)
o データ価値評価技法および価値評価体系、品質認証対象および品質認証基準などの策定と関連業務を専門的に担当する価値評価機関と品質認証機関などの指定を推進する
データ事業者申告
(第16条)
o データ取引事業者、データ分析提供事業者などは、科技情報通信部に申告しなければならず、科学技術情報通信部および関係中央行政機関は、申告事業者に対して必要な財政的・技術的支援などを行うことができる。
データ取引士養成支援
(第23条)
o データ取引に関する専門知識がある者は、科学技術情報通信部長官にデータ取引士として登録することができ、科学技術情報通信部はデータ取引士にデータ取引業務の遂行に必要な情報提供および教育を提供する
創業支援、中小企業特別支援
(第24条、第31条)
o データ基盤産業の活性化および企業のデータ関連力量の強化、事業化などの支援、データ各種支援施策を施行する場合、中小企業の優先考慮およびデータの取引・加工など必要費用の一部を支援する
専門人材の養成
(第25条)
o 科学技術情報通信部長官および行政安全部長官は、データ専門人材を養成するための施策を策定し、科学技術情報通信部長官は専門人材養成機関を指定および支援する
データ紛争調整委員会の設置
(第34条)
o データの生産、取引および活用に関する紛争を調整するためのデータ紛争調整委員会を設置する

データ基本法の期待効果

韓国科学技術情報通信部によると、データ基本法の施行による期待効果は大きく4つあるという。

第1に、国全体のデータ指揮本部(コントロールタワー)の確立である。これまで公共と民間部門のデータ政策を統括する国レベルの意思決定機構の設立に対する産業界の要求が高まっている中、データ基本法は汎省庁組織として国家データ政策委員会を国務総理所属として新設し、3年ごとに国家データ産業振興のための総合計画を確定する予定である。このような国全体の指揮本部の確立と中長期的な汎省庁政策の策定を通じて、国の政策に対する予測性と信頼性を向上させ、迅速な意思決定と投資に寄与すると予想している。

第2に、データ取引・分析提供事業者などデータ専門企業の体系的な育成である。これまでは、データ事業者への法的根拠がなく、体系的かつ総合的な支援が困難な状況であった。そこで、データ基本法は、データ取引・分析提供事業者に対する申告制の導入とともに、必要な財政的・技術的支援を体系的に提供するとともに、データ関連ベンチャー・中小企業に対する力量強化コンサルティングや事業化などを支援するようになっており、データ関連の様々な事業者の体系的な育成とともに、データ産業の基盤づくりに貢献すると考えている。

第3に、データ経済時代革新の促進者としての「データ取引士」養成などの人材養成である。データ取引事業者への支援などで今後データ取引が活発になるものと見込まれる中、韓国科学技術情報通信部は、安全なデータ取引を支援する新たな雇用であるデータ取引士の育成を推進する計画である。データ取引士は、専門知識をもとにデータ取引に関する相談・仲介・斡旋などを行い、データ取引士登録制の運営や教育など、必要な支援を提供する予定である。

第4に、データ資産価値と権利が保障される市場づくりである。データ産業の持続的な発展に伴い、データに対する正当な権利保護と公正な市場環境づくりへのニーズが高まったことから、データ価値評価・資産保護・紛争調整委員会なども導入する予定だという。データ資産の正当な価値を評価し、無断取得・使用・公開などを防ぎ、データの生産・取引・活用に関する各種紛争は、紛争調整委員会で調整される予定である。

今回のデータ基本法は、今後約6カ月間、下位法令の制定作業などを経て、来年4月に本格的に施行され、これまでなかったデータ価値評価、データ取引などに関する新たな制度が導入されるだけに、関連機関・団体・専門家などから十分に意見を収集する予定である。韓国科学技術情報通信部は、データ基本法の本格的な施行により、政府がデータ産業の活性化に向けた呼び水としての役割を忠実に果たし、データが国民の生活に革新をもたらすことを期待すると発表した。

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