2024年06月
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腎部分切除後の回復を促進する止血材料を開発 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は4月30日、機械工学科(Department of Mechanical Engineering)のチョ・ドンウ(Cho Dong-Woo)教授らと大邱韓医大学校コンパニオンアニマルヘルス学科(Department of Companion Animal Health)のイ・ジェヨン(Lee Jae Yeon)教授との共同研究チームが、腎臓からの出血を迅速に食い止め、傷の回復を促進する材料を開発したと発表した。この研究成果は、Biomaterialsのオンライン版に掲載された。

早期発見された腎臓腫瘍は腎部分切除術によって摘出が可能だが、過剰出血や感染、組織損傷などの手術合併症のリスクが大きく、腎機能低下や高血圧といった慢性疾患を発症しやすいことが課題となっている。

今回の研究では、腎臓に特化した止血材料を開発するために、腎臓由来の脱細胞化細胞外マトリックス(decellularized extracellular matrix:dECM)が用いられた。dECMには生体内と同様のタンパク質や因子が内在しているため、腎臓特有の微小環境を再現しやすく、生体適合性に優れている。こうした特性により、dECMは組織工学の分野で広く採用されており、人工臓器の作製や多様な組織の修復に使われるようになっている。

研究チームはまず、腎臓由来のdECMの構成を精査し、その構造内に止血成分が含まれていることを確認した。その後、dECMを化学架橋剤と混合することで、「クライオゲル(cryogel)」と呼ばれる多孔性スポンジ材料の形成に成功した。

クライオゲルは、多孔性に富んでいるために表面積が広く、血液を効率的に吸収することができる。動物実験では、対照群と従来のゼラチンスポンジを使用したグループの両方と比較して、腎部分切除術後4週間時点の組織損傷と壊死が最大3倍まで有意に減少した。さらに、クライオゲルの架橋剤の濃度が、生分解速度や血液適合性などの重用な特性に影響することも観察された。

(出典:POSTECH)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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