韓国の光州科学技術院(GIST)は4月29日、材料科学・工学科(School of Materials Science and Engineering)のイ・ジェヨン(Lee Jae Young)教授のチームが、滅菌と製造が簡単で、機械的特性に優れた医療用神経導管を開発したと発表した。この研究成果は、Advanced Healthcare Materialsに掲載された。
天然高分子や合成高分子から作られる既存のハイドロゲル系人工神経導管は、生体適合性などの優れた長所がある一方、機械的強度が低いために破損しやすいという欠点があり、臨床治療効率が低いことが課題となっている。また、化学的架橋剤の使用や官能基を導入するための化学的改良が必要であることから、毒性のある副産物が発生する。さらに、神経導管の製造では何よりも滅菌が重要だが、従来の方法では素材本来の性質を変化させたり残留ガスの確認が必要になったりと、製造工程が複雑になる。
こうした課題を解決するため、研究チームは30キログレイの高エネルギーガンマ線を照射してゼラチンポリマーを架橋した後、アルギン酸塩をイオン架橋して二重ネットワーク構造のハイドロゲル神経導管を作製した。この方法により、製造・滅菌工程が簡単になった上、優れた引っ張り強度と弾性率を達成し、単一ネットワークの神経導管に比べ、密閉性、耐屈曲性、機械的特性も向上した。
開発した神経導管をマウスモデルに挿入したところ、6週間以上にわたり構造的安定性を保ったまま体内にとどまることが確認された。また、従来の医療用シリコン製神経導管と比較して、神経再生効果が優位に増大し、末梢神経再生により有効であることも確認された。
イ教授は、「この研究の結果により、化学薬品を使用せずに滅菌ハイドロゲル神経導管を製造できることが確認できた。将来的には、神経導管だけでなくインプラントなどの生体移植可能な材料を製造するための新たなプラットフォームとしての利用も期待される」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部