2024年06月
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干ばつで農業用ため池が炭素貯蔵源から排出源へ変化 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は5月20日、同校の研究者が、農業用ため池のデータを分析し、深刻な干ばつが水質悪化に及ぼす水文学的な影響を明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Water Researchに掲載された。

気候変動に伴い、干ばつや洪水がより頻繁に発生するようになっている。こうした事象が世界の水循環や炭素循環に及ぼす影響について、観察データを用いて定量的に把握するための取り組みは、これまで限られていた。

同校の環境科学・工学科(Division of Environmental Science and Engineering)のカム・ジョンフン(Kam Jonghun)教授と博士課程学生イ・クァンフン(Lee Kwang-Hun)氏は、韓国全国の農業用ため池の水位と水質に関する広範なデータセットと回転主成分分析法(rotated principal component analysis)を用いて、2200以上の農業用ため池の2020~22年の水量と全有機体炭素(TOC)濃度を分析した。

結果、主要モード(major mode)の抽出により、以下のことが明らかになった。1)韓国南部における2022年の干ばつ発生時のため池の水位低下と、これに対応するTOC濃度の上昇。2)韓国中央部におけるため池の水位の変動とTOC濃度の変化の相関。さらに、ため池を囲む水田の面積が大きい地域ほど、TOC濃度が上昇したこともわかった。これらの結果により、深刻な干ばつが発生すると、農業用ため池の役割が炭素の貯蔵源から排出源へと変化する可能性が示唆された。

(出典:POSTECH)

カム教授は「ビッグデータと先進的な統計手法を活用することにより、深刻な干ばつにより生じる水循環と炭素循環の変化を定量的に示した。この結果は、特にカーボンニュートラル時代への移行において、量と質の両方を優先する統合的な環境・水政策が必要であることを裏付けている」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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