韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は9月15日、同国の仁荷大学と共同で、天然エラスチンの機能を模倣した新しい人工タンパク質を開発し、心臓弁や血管、靭帯の再生医療に応用できる可能性を示したと発表した。研究成果は学術誌Acta Biomaterialiaに掲載された。
エラスチンは、ゴムのように伸び縮みして元に戻る特殊なタンパク質であり、肺の呼吸運動や血管の拍動、皮膚のしなやかさを支えている。しかし、天然エラスチンを医療用途で利用するには課題が多い。体内での存在量は限られ、精製は複雑で、他者から投与すると免疫反応を起こす可能性がある。
このため、従来はエラスチン様ポリペプチド(ELP)が開発され、大量生産が可能になったものの、天然エラスチンが持つ複雑で精緻な機能を十分に再現することはできなかった。
今回、POSTECHと仁荷大学の研究チームは、ヒトのエラスチン前駆体であるトロポエラスチンから重要な3つの領域を抽出し、新しい人工タンパク質であるエラスチンドメイン由来タンパク質(EDDP)を作製した。これには、物性を決める疎水性ドメイン、構造を安定させる架橋ドメイン、細胞相互作用を促すドメインが含まれている。
EDDPは、従来のELPと同様に大量生産が可能でありながら、天然エラスチンに近い弾力性と復元力を維持する。さらに、細胞に信号を伝えて接着や成長を促進する機能を備えており、損傷組織の再生に効果的であることが示された。

(出典:POSTECH)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部