2023年02月
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酢酸鉛を前駆体とした優れたペロブスカイト太陽電池開発―アンモニアが鍵に オーストラリア

オーストラリア研究会議励起子科学分野のセンター・オブ・エクセレンス(ARC Centre of Excellence in Exciton Science)の研究者らが、酢酸鉛(lead acetate)を前駆体として効果的に用いたホルムアミジニウム-セシウム(formamidinium-caesium)ペロブスカイト太陽電池の作製技術を開発した。

(提供:ARC Centre of Excellence in Exciton Science)

モナシュ大学(Monash University)を拠点とする研究チームは、このペロブスカイト太陽電池で、非ハロゲン化鉛を用いた太陽電池の最高記録となる21%の効率を達成した。この電池を用いた試作品ソーラーパネルは、工業規模での生産に適した方法で作製され、18.8%の効率を示した。また、熱安定性が高く、65℃で3,300時間動作したあとでも効率性が低下しなかった。

酢酸鉛はハロゲン化鉛よりも欠陥の少ない薄膜を生成できる前駆体材料として注目されているが、酢酸鉛を前駆体としたホルムアミジニウム-セシウムペロブスカイトの合成はこれまで成功していなかった。

研究チームは今回、X線回折と核磁気共鳴分光法を用いた解析により、揮発性のカチオン(volatile cation)としてアンモニアを用いる必要があることを発見した。

共同著者のセバスチアン・ヒューラー(Sebastian Fürer)博士は「アンモニアがあることで、望ましくない副産物を生成せずに、アニーリング中に残存する酢酸塩を除去できる」と説明した。責任著者のウェンシン・マオ(Wenxin Mao)博士(モナシュ大学)は、「高品質なペロブスカイト太陽電池を作製する第2の方法を研究界に提供した」と研究の意義を語った。

2022年12月21日付け発表。研究成果をまとめた論文は学術誌 Energy and Environmental Science に掲載された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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