2024年08月
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AI技術を用いて精神疾患治療用サイケデリック薬を開発 豪シドニー大学

オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は6月27日、同大学の脳・精神センター(Brain and Mind Centre)が、次世代のサイケデリック薬(psychedelic drug)の開発を手掛ける豪州のスタートアップ企業サイロ(Psylo)と共同で、先進的なAI技術を用いた精神・神経疾患の治療法の開発に取り組んでいることを発表した。

ニック・エバレット(Nick Everett)博士
(出典:シドニー大学)

このプロジェクトでは、同大学心理学部(School of Psychology)の研究員ニック・エバレット(Nick Everett)博士が開発した、新たな薬剤の行動学的プロファイルや治療特性を予測する機械学習に基づく行動解析技術を、サイロ社の薬剤開発プラットフォームと組み合わせ、薬剤開発期間の短縮や効率性の向上を目指す。

サイケデリック薬、いわゆる「幻覚剤」を用いた精神疾患の治療に関して、豪州では最近、世界で初めて、うつ病とPTSDの治療にマジックマッシュルームの成分シロシビン(psilocybin)と合成麻薬MDMAを用いることが許可された。これらの治療法は有望であるが、高いコストを要する。サイロ社はサイケデリック薬の治療効果を維持しながら、幻覚を誘発せず、特別な管理を必要としない、よりコスト効果の高い治療薬を提供することを目指している。同社は人間への初めての臨床試験を2025年に開始する予定である。

このプロジェクトは、学術研究と産業界のイノベーションを橋渡しし、切実な健康問題に対する実世界での解決策の創出を目指す同大学の取り組みを示す例となっている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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