2024年08月
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霜害に強い小麦品種の開発に向けた研究を実施 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は7月3日、農作物への霜害(frost)が増加していることを受け、霜に強い小麦を作り出すためのさまざまな研究に取り組んでいることを発表した。

霜は毎年小麦に大きな被害を与える

豪州では、気候変動により全体的な気温は上昇しているにも関わらず、遅霜(late spring frost)がより頻繁に発生するようになっている。特に小麦栽培において、開花時期に発生する霜は収量の大幅な低下につながる。

モデリングによると、作物の霜への感受性(sensitivity)を1℃低下させるだけで農家の年間収益が約3億6000万豪ドル増加する可能性がある。CSIROでは、小麦の霜への感受性を決定する条件を明らかにするため、以下のような研究を行っている。

  • 小麦が霜に耐えて生存することを助ける細胞膜の柔軟性に着目し、この柔軟性を決定する代謝物と脂質の状態、これらに関連する遺伝子や環境の条件を調べる。
  • 環境を精密に制御したチャンバー内で小麦を凍結ストレスに曝露させる実験により、霜への感受性に関連する遺伝子や遺伝領域を発見する。
  • 遺伝学的な比較に基づき、霜から身を守ることに役立つ形態的・構造的性質を持つ品種を特定する。

開花開始時に凍結処理を施した株と比較した、暖地で栽培した株の小麦の穂軸
(出典:いずれもCSIRO)

上記の研究が成功すれば、植物育種家が先進的な選別手法を用いてより霜に強い親系統を作り出すことにつながる。

これらのプロジェクトは穀物研究開発公社(Grains Research and Development Corporation)から出資を受け、チャールズスタート大学(Charles Sturt University)等複数の大学や組織と共同で実施されている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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