オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は4月8日、マイクロクラインと呼ばれる鉱物の構造的特性に注目し、宇宙空間での建築資材としての可能性を探る研究が進行中であることを発表した。
マイクロクラインは美しい装飾用の鉱物であり、アマゾナイト変種では特有のブロック状の長方形の結晶が見られる
マイクロクラインは長石の一種で、リチウムなどの重要鉱物とともにペグマタイト鉱床で見つかる鉱物だ。ターコイズや白などの美しい模様から装飾用石材として用いられてきたが、近年ではその鉱物学的性質が建築資材として再評価されている。とりわけ、顕微鏡下で観察される「双晶」と呼ばれる独特のタータン模様は、形成過程においてナトリウムとカリウムを豊富に含む成分により生み出され、この元素間の関係は、地上や宇宙での建設用ジオポリマーの開発について、重要な手がかりを与える。
十字偏光下で特徴的なタータン双晶を示すマイクロクライン結晶
Source: The Sedgewick Museum (出典:いずれもCSIRO)
CSIROの「持続可能な採鉱技術プログラム」では、鉱山副産物を活用したジオポリマー(セメントなどの製造に使われる産業副産物から作られるセラミック様の素材)技術を開発しており、従来のコンクリートと同様の強度を持つ合成岩石の製造に成功しているという。これにより、地上からの建築資材の輸送を最低限に留め、月や火星といった地球外環境において現地調達した素材から建築資材を生成することが現実味を帯びてきた。
研究を主導するCSIROの上級空間科学者であるロマーナ・デュー(Romana Dew)博士は、「ジオポリマー内のマイクロクラインの有無は、もともとの岩石成分の再編成や起こっている化学反応を理解する上で重要であり、元素間の結合特性を理解する上でも役立ちます。これは、惑星外での建築資材製造に向けた応用にもつながります」と語った。
また、宇宙空間での建設においては物資の運搬コストが大きな課題となるため、少量の試薬を輸送し、現地で資材を生成できる技術は大きな利点となる。CSIROでは現在、月面や火星の地形に似た地球上の場所を活用し、技術の検証を進めている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部