オーストラリアのディーキン大学(Deakin University)は7月30日、バーウォン・ウォーター(Barwon Water)社およびオーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)と共同で、下水処理施設のバイオソリッドや家庭の食品残渣、庭の剪定くずをバイオチャールに変換し、農業利用や蓄電池材料として活用する研究を開始したと発表した。
本プロジェクトは、ディーキン大学の「リサイクルとクリーンエネルギー商業化ハブ(REACH)」の一環であり、ジーロング地域の土壌条件に適したバイオチャールの最適配合を探り、穀物や豆類の高付加価値生産を目指す。バイオチャールは有機物を制御加熱して得られる炭素豊富な物質で、土壌の栄養保持力や保水性を高め、植物根圏の微生物活動を活性化させる効果がある。
ディーキン大学ワーン・ポンズキャンパスでは、実験室・温室・農場での試験を通じて、土壌肥沃度や収量を向上させるバイオチャール配合の開発と、農業利用における費用対効果や環境影響の評価を行う。バーウォン・ウォーター社はビクトリア州にあるブラックロック(コネワー)およびコラックの水再生施設で年間約6万tのバイオソリッドと、計5万4000tの有機系廃棄物を処理し、バイオチャールを生産する計画だ。
さらに、同プロジェクトでは、ディーキン大学フロンティア材料研究所と連携し、ナトリウムイオン電池の陽極活性材料としてのバイオチャールの利用可能性も探る。これが実現すれば、再生可能エネルギーの蓄電用途で使用されるリチウムイオン電池に代わる、より安価で安全な選択肢となる可能性がある。
RMITのカルピット・シャー(Kalpit Shah)教授は「バイオソリッド廃棄物をエネルギーと農業の両分野で活用できるバイオチャールに変換することで、オーストラリアの循環型経済に貢献できます」と述べた。バーウォン・ウォーター社のショーン・カミング(Shaun Cumming)社長は「廃棄物から持続可能な製品を生み出すことで地域経済を活性化し、ビクトリア州を持続可能技術の拠点とします」と強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部