2025年12月
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産業分野の重要な修理手法に変革をもたらすContinuous3D 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は11月17日、CSIROで開発された技術が、産業分野で重要な金属部品の修理や保守の手法に変革をもたらしていると発表した。

2台の産業用ロボットを操作するCSIROのピーター・キング(Peter King)博士
© Nick Pitsas

オーストラリアは多くの先進国と同様、熟練技能者不足が差し迫った問題となっている。CSIROのロボット製造チームのシニアリサーチサイエンティストであるピーター・キング(Peter King)博士は、オーストラリアでは2030年までに7万人の溶接工が必要になると指摘する。同博士は、「以前はこういう人たちがいましたが、今の若い世代は他の職業に関心を持っています。そのため、重要インフラの維持や製造を継続する問題が生じています」と述べた。

CSIROのContinuous3Dプロジェクトは、ロボットに産業用機器の修理を効率的に行わせるための知能と視覚を与え、熟練技能者不足に取り組む。Continuous3Dは、産業用ロボットの操作を簡単に生産的に行いたいという必要性から生まれた。このシステムは、レーザースキャナーやインテリジェントソフトウェアなどの先進センサーを産業用ロボットに搭載することで、これまでの方法に変革を与える。

Continuous3Dソフトウェアを用いて、ロボットによるエンジンブロックの3Dスキャンと修復を実施
© Nick Pitsas (出典:いずれもCSIRO)

開発された技術は、修理作業ごとにロボットを手作業でプログラミングしたり、材料を測定したり、CADファイルを作成したりする手間を省くことができる。オペレーターはContinuous3Dのソフトウェアで必要な作業プロセスを自動で作成することができ、ロボットは部品をスキャンし、修理が必要な領域を特定し、計画の作成を行う。この作業は数時間ではなく、多くの場合数分で完了する。

Continuous3Dは柔軟性を重視し設計されており、既存の産業用ロボットアームへの後付けが可能である。またセンサーは堅牢で粉塵の多い高温環境など過酷な条件下でも動作する。大型の採掘バケットから小型の精密エンジン部品まで、幅広い部品の処理に対応する。同博士は、Continuous3Dは人間の代替ではなく、人間の能力を高めることを目的としていると強調する。Continuous3DはCSIROにある複数のラボで使用されており、鉱業分野や航空宇宙分野の業界パートナーと共に試験運用されている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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