オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は8月17日、同大学の研究者らが、極低温粒子の振る舞いに関する数十年来の考え方を覆す新たな種類の量子物質を理論的に予測したと発表した。研究成果は学術誌Physical Review Lettersに掲載された。
研究チームは、根本的に異なる2種類の量子粒子であるボソンとフェルミオンの混合物が、適切な条件下で安定した自己結合型の「量子液滴」を形成できることを示した。相互作用の強いボース・フェルミ系では、こうした特異な液滴は存在しにくいと考えられてきた。通常の液滴と異なり、この量子液滴では粒子間の引力とフェルミオンが生み出す圧力が正確に釣り合い、系の崩壊を防ぐ。
筆頭著者で同大学物理・天文学部の博士課程学生サム・フォスター(Sam Foster)氏は「大きく異なる2種類の粒子が互いを完全に釣り合わせ、実質的に自らまとまりを保つ安定した液滴を形成できることを示しました」と説明した。従来の理論で記述できたのは、粒子間相互作用が比較的弱い場合に限られていたが、新たな手法では、より強い相互作用の下で生じる現象を調べられる。予測した液滴は既存の極低温原子実験で実現できるとみられ、実験による確認が現実的な次の段階となる。
研究は、同氏、同学部のイェスパー・レビンセン(Jesper Levinsen)准教授、ミーラ・パリッシュ(Meera Parish)教授が、ハイデルベルク大学の研究者らと実施した。
研究チームはさらに、液体と気体の間の転移に似た量子的振る舞いの証拠も見いだし、量子相が予想外に豊かな広がりを持つことを明らかにした。この発見は、世界各地の実験に新たな理論的道筋を示し、超高精度センサーや量子コンピューティングを支える量子物質への理解を深める可能性がある。同氏は「極端な量子条件下で物質がどのように自己組織化するかを理解することで、量子系を設計・制御する新たな手段が得られます。これは基礎研究ですが、このような発見が明日の量子技術の基盤となることは少なくありません」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部