中国気象科学研究院の研究チームが、黄砂予報の精度と処理速度を高めるエアロゾル・気象結合予報AIモデルを開発した。従来の数値予報モデルに比べ、処理速度は100倍以上向上している。人民日報が伝えた。
中国の西北部では、域外から流入する黄砂の影響で、砂塵や浮遊塵などがしばしば発生する。影響範囲が広く、移動経路や変化も複雑なため、黄砂を迅速かつ正確に予報することは、人々の生活や生産活動に関わる。
甘粛省蘭州市にある中国気象局蘭州乾燥気象研究所では、数値モデル研究室の首席専門家である段海霞氏らが、黄砂予報データの処理結果を分析している。同研究所は2025年10月末、このAIモデルを導入し、試験運用を始めた。
黄砂予報の鍵となるのは、エアロゾルと気象要素の「結合」だ。従来の数値予報モデルの多くは、黄砂やPM2.5などのエアロゾルを、気温、風速、気圧などの気象要素と分けて計算していた。しかし実際には、風の強さは黄砂の発生強度や移動距離を左右し、湿度や降水は沈降速度に影響する。大量の黄砂粒子は太陽放射を遮り、雲や降水にも影響を及ぼす。
中国気象科学研究院の車慧正研究員率いるチームは、こうした相互作用を分析するAIモデルを開発した。従来の数値予報モデルでは、大規模コンピュータークラスターを使って全地球規模の予報を1回実施するのに数時間を要し、通常は1日に2~4回しか予報できなかった。一方、このAIモデルはGPU(画像処理装置)による計算が可能で、予報計算に必要な時間は36秒に短縮された。
ただし、モデルをそのまま中国西北部の地域予報に使うには、解像度の面で課題があった。このため研究チームは、モデルが提供するデータをダウンスケーリングした。同研究所によると、従来50キロメートルだったデータの空間解像度を5キロメートルに高め、黄砂の光学的厚さや質量濃度などの重要パラメータについて、高い時空間分解能を持つ可視化データを生成している。
モデルによる予測とダウンスケーリングを経た予報データは、リアルタイムで甘粛省気象局蘭州中心気象台のサーバーへ送信され、最終的な予報発表の参考情報として利用されている。段氏は、「この半年余りで中国北部における10回以上の広域黄砂現象を比較的高い精度で予報してきた」と説明。3~5日先の環境気象予報に対応し、エアロゾル総量や地表付近の黄砂濃度の予測では、国際的な先進予報システムと比べて精度が10~30%向上したとしている。
このモデルは、黄砂の強さや発生時刻の予測に加え、健康や移動に関する注意喚起にも活用できる。例えば、黄砂中のアレルゲン粒子濃度を分析し、アレルギー体質の人にN95マスクの着用や屋外滞在時間の短縮を促すことができる。医療システムと連携すれば、黄砂が多い時期の呼吸器疾患の受診増加を予測し、医療機関の事前対応を支援することも想定されている。
将来的には、送電塔の保守運用や農作物の灌漑時期の調整、森林火災対策などへの応用も見込まれる。黄砂予報にとどまらず、気象リスクの予測や現場の判断を支援する技術として活用が広がる可能性があるという。