人工知能(AI)の普及に伴い、中国では「FDE」と呼ばれる職種への注目が高まっている。FDEは「Forward Deployed Engineer」の略で、顧客企業の現場に入り、AIなどを業務で使える形に実装するエンジニアを指す。例えば物流企業では、社員がPDFから伝票番号や発送先を手入力していた作業を、AIで数秒で処理できるようにするなどの業務改善を担う。関連プラットフォームのデータによると、過去2年間でFDEの求人数は42倍に増加した。SNSでは「AI業界で最も注目される職種」とする声も出ている。中国新聞網が伝えた。
求人プラットフォームでは、大手企業が提示するFDEの年収が100万元(1元=約24円)を超える例もある。
ビジネス特化型SNSのリンクトインが2026年1月に発表したグローバル労働市場動向に関する報告によると、過去2年間で企業が新たに増やしたAI関連求人は少なくとも130万件を超えた。データアノテーター、AIエンジニア、FDEなどが含まれる。こうした職種は5年前には目立たなかったが、現在はデジタル経済を支える職種の一部になっている。なかでもFDEの求人数は2023年から25年までの間に42倍に増え、AIエンジニアも13倍に増加した。
猟聘やBOSS直聘などの求人プラットフォームでは、字節跳動(バイトダンス)や螞蟻数科(アントデジタルテクノロジー)などがFDE人材を募集している。
求人例を見ると、バイトダンスの「豆包AI大規模モデルFDE」は月給3万5000元~7万元で、年間15カ月分の給与を支払う条件となっており、最高額で年収105万元となる。アントデジタルテクノロジーの「B端FDE」は月給4万元~6万元、北京智譜華章科技有限公司(Zhipu AI)の「FDE責任者」は月給6万元~8万元が提示されている。
ただし、高額の年収が目を引く一方、取材に応じた関係者によると、中国国内で年収100万元に達するFDE求人はトップレベルの中核人材に集中しており、業界の平均水準ではない。
上海市のAI企業で働くFDE関係者によると、同社では下位職級のFDEの月給は2万元~3万元ほどで、上位職級のFDEは年俸制が中心となり、40万元以上の人が多いという。
では、FDEとは具体的にどのような仕事をする職種なのか。
広東省深圳市在住のA氏は以前、大手テクノロジー企業でプログラマーを務めていた。少し前、ある物流企業からAIを使った業務フロー改善の支援を依頼されたことをきっかけに、勤務先を辞めて起業し、FDEになった。
依頼元の物流企業では、顧客から送られてくるPDFから伝票番号や発送元・発送先の住所などを手作業で抜き出し、エクセルに入力していた。社員は40~50人で、そのうち20~30人がこうした作業を繰り返していたという。
そこでA氏は、AIプログラミングツールを使い、デモンストレーション版のソフトウェアを作成した。それまで人が数分かけて処理していたPDFを、AIが数秒で解析できるようになった。A氏は「効率向上を確認した物流企業は、すぐに意向契約を結んだ」と話した。
米ロサンゼルスで働くB氏は「FDEは特殊なプログラマーだ」と説明する。この仕事は製品の特定の機能モジュールを開発するものではないが、製品全体の7割程度を理解していなければならない。その理解をもとに顧客と直接やり取りし、顧客の業務フローやデータ構造を把握する。最終的には、製品を顧客の業務に適合させ、実際に導入して使える状態にする職種だという。
B氏によると、従来の企業向けソフトウェアは、企業が標準化された製品に業務を合わせて使うことが多かった。一方、AI時代には、製品を顧客の業務フローに深く組み込む必要がある。B氏は「技術を理解し、コードも書ける人材が、現場で顧客とともに実装方法を判断しなければならない」と述べた。