中国遼寧省大連市で開かれた世界経済フォーラム(WEF)のニュー・チャンピオン年次総会(夏季ダボス会議)で6月23日、2026年度版の「10大新興技術報告書」が発表された。今後3~5年以内に経済や社会に影響を与える可能性がある技術として、10項目が紹介された。人民網が伝えた。
今回選ばれた10大新興技術は、(1)エブリシング・トゥ・グリッド・エネルギー(2)直接リチウム抽出技術(3)受動的放射冷却材料(4)ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の分解技術(5)精密発酵技術(6)エクソソームを利用した薬物送達(7)個別化mRNAがんワクチン(8)量子シミュレーションを用いた創薬(9)世界モデル(10)格子ベース暗号となっている。
1. エブリシング・トゥ・グリッド・エネルギー(Everything-to-grid energy)
建物、車両、工場、データセンターなどが、エネルギーの消費主体であると同時に供給主体としても機能し、蓄えた電力を必要に応じて電力網に戻す仕組み。エネルギーシステムのレジリエンス向上や、地域の再生可能エネルギーの効率的な利用につながるとされる。
2. 直接リチウム抽出技術(Direct Lithium Extraction)
塩水から数時間でリチウムを抽出する技術。従来のプロセスでは数カ月かかっていた工程を短縮できるほか、水資源の消費や土地利用を抑えられる。電池の主要原料であるリチウムの供給ルートを広げ、グローバルサプライチェーンの安定化につながる技術として期待されている。
3. 受動的放射冷却材料(Passive Radiative Cooling Materials)
太陽光を反射し、熱を大気中に逃がすことで、エネルギーを使わずに建物や設備を冷却する材料。エネルギー消費の削減や、高温環境への対応に役立つ可能性がある。
4. ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の分解技術
PFASを分解する新たな処理技術。PFASは従来の方法では除去が難しく、「永遠の化学物質」とも呼ばれる。この技術は、水域や環境中に残る難分解性汚染物質の除去に向けた手段として期待されている。
5. 精密発酵技術(Precision Fermentation)
微生物を利用して、特定の成分や材料を効率よく合成する技術。食品、化学製品、医薬品の生産で、エネルギー消費や環境負荷を抑える新たな手法として活用が見込まれている。
6. エクソソームを利用した薬物送達(Exosome Drug Delivery)
エクソソームは細胞から分泌される天然の微粒子で、遺伝子工学的な改変を加えることで、体内で治療薬を標的部位に届ける用途が想定されている。脳など、これまで薬物を届けにくかった部位への治療にも応用できる可能性がある。
7. 個別化mRNAがんワクチン(Personalized mRNA Cancer Vaccines)
患者自身の免疫システムを活性化し、がん細胞の遺伝子変異によって生じるネオアンチゲン(新生抗原)を識別させるワクチン。がん手術後の再発リスクを下げる効果が期待されている。
8. 量子シミュレーションを用いた創薬(Quantum Simulation for Drug Discovery)
分子間の相互作用を高精度でシミュレーションし、研究者が医薬品候補物質や化合物をより迅速かつ効率的にスクリーニングできるよう支援する技術。創薬プロセスの効率化につながる可能性がある。
9. 世界モデル(World Models)
AIシステムがマルチモーダルデータを統合し、物理環境に対する総合的な認識を構築するためのモデル。機械による予測、計画、現実世界との相互作用の改善に使われる。
10. 格子ベース暗号(Lattice-based Cryptography)
既存のコンピューターに加え、将来の量子コンピューターによる暗号解読にも備える暗号技術。量子コンピューティング技術の発展を見据え、デジタルインフラの安全性を確保する技術として位置付けられている。
第17回夏季ダボス会議は6月23~25日に遼寧省大連市で開催された。テーマは「規模化するイノベーション」で、90以上の国・地域から1700人余りが参加し、世界経済の発展について議論した。