女子の入学者数が18%増 全インド高等教育調査報告書公表

2021年10月6日 西川 裕治(元 JST インドリエゾンオフィサー)

インド教育省は、「全インド高等教育調査2019-20報告書」(All India Survey on Higher Education 2019-20: AISHE)を公表した。公表は2021年6月10日付。この報告書は、インドの高等教育の現状に関する主要なパフォーマンス指標を提供しており、インド高等教育の全貌を知るための最も重要な報告書のひとつといえる。

本サイトのコラムでは8~9月にかけて、インド連邦政府により承認された「国家教育政策2020」を3部構成で紹介した(下欄参照)。今回の報告書は、国家教育政策の重要な前提条件となっていると考えられる。ここでは、インド政府のプレスリリース、さらに同報告書のサマリーと主要なポイントを紹介する。

重要ポイント:

  • ① インド政府は高等教育を継続的に重視
  • ② 入学者数は2015~16年から2019~20年で11.4%増加
  • ③ 2015~16年から2019~20年で、高等教育における女子の入学者数は18.2%増加
  • ④ 2019~20年の高等教育における総入学率(Gross Enrolment Ratio: GER)は27.1%

報告書の主な特徴:

  1. 1. 高等教育への総入学者数は、2018~19年の37.4百万人に対し、2019~20年は38.5百万人となり、1.136百万人(3.04%)の伸びを記録した。因みに、2014~15年の総入学者数は34.2百万人だった。
  2. 2. 高等教育に登録された適格年齢層に属する学生の割合である総入学率(GER)は、2018~19年の26.3%、2014~15年の24.3%に対し、2019~20年は27.1%と増加。
  3. 3. 2019~20年の高等教育におけるジェンダーパリティ指数(GPI)は、2018~19年の1.00に対して1.01に増加しており、男性に比べて対象年齢層の女性の高等教育への相対的アクセス(入学)が向上。
  4. 4. 2019~20年の高等教育における、学生と教員の比率は26。
  5. 5. 2019~20年の大学数1,043(2%)、カレッジ数 42,343(77%)、独立教育機関数11,779(21%)。
  6. 6. 学部および大学院レベルに在籍中の学生数は3,380万人。内、85%近く(2.85千万人)の学生が、①人文科学、②自然科学、③商学、④工学・技術、⑤医学、⑥IT・コンピューターの6つの主要分野に在籍中。
  7. 7. 2019~20年に博士課程に在籍する学生数は20.3万人(2014-15年は11.7 万人)。
  8. 8. 教師の総数は1,503,156人で、内訳は男性57.5%、女性42.5%。

同報告書の公表に際して、インド教育省(発表当時「人的資源開発省」)のラメシュ・ポクリヤル(Ramesh Pokhriyal)大臣は次のように述べている。
「2015~16年から2019~20年までの過去5年間で、学生の入学者数は11.4%増加した。この期間のる女性の高等教育への入学者数の増加率は18.2%だった。モディ首相のリーダーシップで、インド政府は女子教育や、女性及び社会的後進階級層のエンパワーメントに継続的に注力し、特に、これらの人々の高等教育への参加が増加している」

サンジェイ・ドートレ(Sanjay Dhotre)国務大臣は、次のように述べた。
「この報告書に掲載された結果は、モディ首相が国内の高等教育部門で採用した政策の成功を示す指標であり、同報告書が政策立案者にとって、国の高等教育シナリオを改善するために役立つことを期待している」

アミット・カレ(Amit Khare)教育省・高等教育庁長官は、次のように述べた。
「今回の報告書は、高等教育庁が毎年発表しているAISHEシリーズの第10弾である。入学者数、教育機関数、男女比が継続的に増加しているのは、『国家教育政策2020』に基づいた、教育へのアクセス、平等、質の向上に向けたわが国の大きな動きの一環である」

「AISHE 2019-20報告書」概要

読者への情報(背景と前提):
同報告書は、AISHEポータル(www.aishe.gov.in)にAISHEコードで登録されている国内のすべての高等教育機関を調査対象としている。教育機関は、大学(University)、カレッジ(College)、独立教育機関(Stand-Alone Institution)の3つのカテゴリーに大別される。

  • AISHEポータルには1,043の大学、42,343のカレッジ、11,779の独立系教育機関が登録されており、そのうち1,019の大学、39,955のカレッジ、9,599の独立系教育機関から調査への回答があった。また、307 の大学が提携カレッジを持っている。
  • 396 大学は私立。420 の大学が農村部に位置している。
  • 女性専用の大学は17校あり、ラジャスタン州に3校、カルナタカ州とタミル・ナードゥ州に2校、アンドラ・プラデシュ州、アッサム州、ビハール州、デリー州、ハリヤナ州、ヒマーチャル・プラデシュ州、マハラシュトラ州、オディシャ州、ウッタラカンド州、西ベンガル州に各1校ある。
  • 国立(中央)オープンユニバーシティ1校に加えて、州立オープンユニバーシティ14校、私立州オープンユニバーシティ1校に加え、遠隔教育を行うデュアルモード・ユニバーシティが110校あり、そのうち最大となる13校がタミルナードゥ州にある。
  • 一般大学が522校、技術系大学177校、農業関連大学63校、医学系大学66校、法律系大学23校、サンスクリット語大学12校、言語系大学11校で、残りの145校はその他のカテゴリーの大学。
  • インドでカレッジ数の多い上位8州は、ウッタル・プラデシュ州、マハラシュトラ州、カルナタカ州、ラジャスタン州、アンドラ・プラデシュ州、タミル・ナドゥ州、マディヤ・プラデシュ州、グジャラート州。
  • カレッジ数は、バンガロール都市部が1,009校で最も多く、ジャイプールが606校で続いている。上位50地区のカレッジ数は全体の約32%である。
  • カレッジの密度、すなわち適格者人口(18~23歳の人口)10万人あたりのカレッジ数は、全インド平均の30に対し、ビハール州の7からカルナタカ州の59まで様々である。
  • 60.56%のカレッジが農村部に位置している。また、10.75%のカレッジは女性専用。
  • 35.04%のカレッジが大学院レベルのプログラムを持っているが、わずか2.7%のカレッジが博士課程を持っている。
  • 32.6%のカレッジが単一のプログラム(コース)のみを運営しており、そのうちの84.1%は私立である。これら私立カレッジのうち、37.4%の大学がB.Ed.(教育学士)コースのみを運営している。

主要な調査結果(Key Results of the AISHE 2019-20)<Page I~III>:

  • 78.6%のカレッジが私立であり、65.2%は補助を受けない私立で、13.4%は補助を受けている私立校。
  • アンドラ・プラデシュ州とテランガナ州では、約80%が私立カレッジであり、ウッタル・プラデシュ州では78.5%が私立、一方、チャンディーガルでは私立は8.0%。
  • 16.6%のカレッジでは学生数は100人未満で、3000人以上の学生を持つカレッジはわずか4%。
  • 高等教育の総登録者(在籍者)数は3,850万人と推定されており、内訳は男子1,960万人、女子1,890万人で、女性が全体の49%を占めている。
  • インドの高等教育における総就学率(GER)は 27.1 であり、これは 18 〜 23 歳の年齢層が対象。男性のGERは26.9、女性のGERは27.3。また、全国でのGERが27.1であるのに対し、指定カースト(SC:Scheduled Castes)は23.4、指定部族(ST:Scheduled Tribes)は18.0となっている。
  • 高等教育全体の約11.1%が遠隔教育就学であり、そのうち44.5%が女子学生。
  • 約79.5%の学生が学部レベルに在籍している。202,550人が博士課程に在籍しており、それは全学生数の約0.5%。
  • 最も多くの学生がB.A.(Bachelor of Arts: 教養学部課程)に在籍、次いでB.Sc.(Bachelor of Science:理学部過程)とB.Com.(Bachelor of Commerce:商学部過程)に在籍。全体で約196ある学部課程のうち、10課程で高等教育に登録している学生全体の79%を占めている。
  • 学部課程では、芸術/人文/社会科学コースに在籍する学生が32.7%と最も多く、次いで理学16%、商学14.9%、工学・技術12.6%となっている。
  • Ph.D.(博士課程)では、工学・技術系が最も多く、次いで理学系となっている。一方、大学院課程では、社会科学系のコースに在籍する学生が最も多く、理学が第2位となっている。
  • 学生数が最も多いのはウッタル・プラデーシュ州で、次いでマハラシュトラ州、タミル・ナードゥ州となっている。
  • 学生全体の14.7%が"指定カースト(SC)"、5.6%が"指定部族(ST)"、37%が"その他後進階級(Other Backward Classes)"に属している。また、5.5%が少数派のイスラム教徒で、2.3%がその他の少数派のコミュニティに属している。
  • 高等教育機関に在籍する外国人学生の総数は49,348人。
  • 留学生の出身国は、世界168カ国に及び、上位10カ国で全体の63.9%を占めている。
  • 近隣諸国からの留学生が最も多く、ネパールが全体の28.1%を占めており、次いでアフガニスタン9.1%、バングラデシュ4.6%、ブータン3.8%、スーダン3.6%となっている。
  • 全体の78.6%以上が私立カレッジ(補助付き&補助無し)だが、全体の66.3%の学生しか受け入れていない。
  • 教員総数は1,503,156人で、うち約57.5%が男性で約42.5%が女性。全インドでは、男性教員100人に対して女性教員は74人しかいないことになる。
  • 大学・カレッジの学生数と教員数の比率(PTR)は、(遠隔モードではない)通常モード在籍者ベースで29であるのに対し、構成機関(カレッジ)を持つ大学のPTRは通常モードの入学者数で18と(良く)なっている。(参考:①大学・大学、及び②独立教育機関における通常モードのみの在籍者数ベースでは、全インドでの学生・教師比率(PTR)は26と24になる)
  • 教員以外のスタッフに関しては、グループCの割合が40.1%と最も高く、次いでグループDが27.7%、グループAが15.1%、グループBが17.2%を占めている。
  • 非教職者の平均では、男性100人に対して女性は51人。
  • 2019年中にPh.D.(博士号)を授与された学生は38,986人で、男性21,577人、女性17,409人。
  • B.A. 学位を授与された学生は2.03百万人で最大数。B.Sc.は1.06百万人で2番目に高く、B.Com.の93万人が続く。
  • 大学院レベルでは、M.A.(Master of Arts)の合格者数が最も多く、M.Sc.とM.B.A.がそれに続く。
  • アーツ(自然科学以外の教養コース)の卒業者数が最も多く、2.07百万人。
  • Ph.D.(博士号)レベルでは、理学分野の学生が最も多く、次いで工学・技術分野。一方、大学院レベル全体では、社会科学分野で最も多くの学生が卒業しており、理学分野は第2位となっている。
  • 博士号取得者の割合は、州立大学で最も高く29.8%、次いで国家重要機関(INI) 23.2%、私立みなし大学13.9%、国立大学13.6%となっている。
  • 女子学生の割合が最も低いのは国立重要機関(INI)で、次いで国立みなし大学、州私立大学となっている。