2022年03月02日
小林クリシュナピライ憲枝(こばやし・くりしゅなぴらい・のりえ):
長岡技術科学大学 IITM-NUT
オフィス コーディネーター
<略歴>
明治大学文学部卒。日本では特許・法律事務所等に勤務した。英国に1年間留学、British Studiesと日本語教育を学ぶ。結婚を機にシンガポールを経てインドに在住。現在はインド工科大学マドラス校(以下IITマドラス校)の職員住宅に居住している。長岡技術科学大学のインド連携コーディネーターを務めるとともに、IITマドラス校の日本語教育に携わる。
参考:日本の組織力とインドの個の才能...日本で就業したインド人エンジニア達は何を見たか アンケート➀
世界のITを牽引するインドの若きエンジニア達。日本語学習経験や、日本での留学経験、インターンシップ経験を経て、日本企業に就職する者も増えてきている。彼らは日本の一流企業でエンジニアやサイエンティストとして就業したり、母国に戻って日印の懸け橋となって働いたりしている。前回と同様、こうしたインド人エンジニア達にアンケートを実施し、その回答を紹介する。回答者は12人で、インドトップのインド工科大学(IIT)卒を中心とし、全員工学系。
キャンパスに生息する近危急種のブラックバック=インド工科大学マドラス校(IITM) (写真提供:筆者)
インド人エンジニアがアンケートに回答したうち、日本での生活や職場などで感じた、両国の言語環境は以下の通り。
日本 | インド |
---|---|
・日本の企業では日本語が主な言語。生活のためにも日本語が必要。 | ・インドの企業では英語が主に使用される。英語が分かれば、インドでのサバイバルと仕事には大きな問題はない。 |
・日本語しか通用しない問題があり、インド人が日本よりヨーロッパ、アメリカ、カナダを好む大きな理由となっている。インド人は概して言語に強いので、日本に行けば日本語に適応するが、そこまでして日本に行く人は多くはない。 | ・インドには、言語が1000あると言われるが、英語でつながっている。 |
・日本では、日本語が理解できれば多くの機会を得られる。 | ・インドでは、英語が理解できれば多くの機会を得られる。 |
・日本全国で共通して日本語が使用されることで、新たなことを導入したり、国をまとめたりしやすい。思考の伝達やコミュニケーションもしやすい。ただし、外国人には特に初期の言語の習得は大変。 | ・インドでは、ほぼ州ごとに言語、方言が違い、多様性や創造性にはよい。ただし、結束という点では欠くものもあり、国全体を一つのプラットフォーム上にまとめて管理するのは難しい。 |
・日本人は、少なくとも基本的な英語は理解してほしい。英語を話すことでグローバルな思考ができるようになるから。 |
◇ 日本人の英語力の向上については、昨年、「日本に留学したインド人卒業生は何を思ったか アンケート後編:留学後・日本の大学」[3]でも言及した。一つの案は、日本の義務教育の教科書に対応する、英語(及びその他の多言語)訳が低コストで手に入るようにすることである。これらの英語訳をデジタル版(特に、算数・数学、理科・科学、技術、家庭など)として公開すれば、学びたい人たちは誰でもアクセスでき、英語力を基礎から伸ばすことが可能となる。また、日本の教育を世界に紹介する機会にもなるだろう。
インド工科大学マドラス校(IITM)の正門 (写真提供:筆者)
インド人エンジニアが日本で直面した問題は以下の通り。
=つづく