インド工科大学マドラス校(IIT-M)は5月7日、同学の機械工学科とインドのスリーチトラティルナル工科大学の研究者らが、マグネシウムの金属水素化物(MH)と硝酸ナトリウムの相変化材料(PCM)を利用して、水素貯蔵システムの設計と最適化に関する数学的研究を行ったと発表した。
本研究では、MHからPCMへの効果的な熱伝達を高めるため、銅製フィンを増やしてその効果を調査している。フィンの枚数が多いほど、水素吸収を達成するまでの時間が短くなり、28枚のフィンを使用したリアクターでは、10枚のフィンを使用したリアクターに比べ、水素吸収率90%を達成するまでの時間が約97%短縮された。さらに、本研究ではフィン係数とフィン効率についても評価を行った。
これらの結果から、水素貯蔵システムの性能評価基準は、フィン枚数の増加とともに向上することが明らかになった。また、水素供給圧力の増加は、反応器の初期温度に比べ、水素吸収により大きな影響を与えていることが分かった。
インド工科大学ティルパティ校(IIT-Tirupati)機械工学科のアニル・クマール・エマダバトゥニ(Anil Kumar Emadabathuni)博士は、「水素貯蔵システムの開発は、国家水素エネルギーミッションの成功のための大きな課題となっています。その中でMHを使った水素の固体貯蔵は、水素を貯蔵する最も安全な方法の一つです。水素化マグネシウム(MgH2)はMHの中で最も高い可逆的水素貯蔵容量を持っています。しかしながら、マグネシウムの水素吸収と脱離速度は低く、水素を脱離するには350℃以上の熱エネルギーが必要です。本論文では、PCMを用いて、水素吸収時に放出されるエネルギーを貯蔵し、水素脱離時に利用する新しいアプローチを採用しています。またMHとPCMの熱伝達特性は、銅製フィンを埋め込むことで向上しています。本研究は、水素化マグネシウムを用いた固体水素貯蔵の研究分野に大きく貢献するものと考えられます」と、この研究の重要性について語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部