2025年06月
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金属フリーの有機触媒開発、機械的エネルギーで水素ガスを生成 インド

インド科学技術省(MoST)は5月5日、MoSTの独立研究機関であるジャワハルラール・ネルー先端科学研究センター(JNCASR)の科学者らが、費用対効果が高く、機械的エネルギーを利用して効率的に水素ガスを生成することができる金属フリーの多孔性有機触媒を開発したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Functional Materialsに掲載された。

インド政府は、水素ガスの大規模生産や、研究と技術革新を推進し、水素経済における世界的リーダーとしての地位を確立するため、国家グリーン水素ミッションを掲げている。環境に優しい水素ガス生成の中でも、水の分解は反応エネルギーが登り坂であるため、触媒戦略に依存した効果的で展開可能な技術として考えられる。

ピエゾ触媒は、ピエゾ材料による機械的摂動を利用し、電荷キャリアを生成し、水分解の触媒として使用される有望な触媒である。インドのベンガルールにあるJNCASR材料物理化学ユニットのタパス・K・マージ(Tapas K. Maji)教授の研究チームは、ピエゾ触媒による水分解を行うため、金属を含まないドナー・アクセプターベースの共有結合性有機構造体(COF)を開発した。

この研究では、有機ドナー分子のトリス(4-アミノフェニル)アミン(TAPA)とアクセプター分子のピロメリット酸無水物(PDA)との間のイミド結合から構築されたCOFが水を分解して、水素ガス生成を行う効率的なピエゾ触媒活性を示した。この発見は、ピエゾ触媒が水分解の反応に有効な触媒として、重金属や遷移金属ベースの強誘電体(FE)材料を用いた従来法の概念を打破した。

研究チームは、TAPAのような単純なドナー分子とPDAのようなアクセプター分子を用いて、双極子(正電荷と負電荷の分離)を作り出す強い電荷移動特性を持ったCOFシステムを構築した。その結果、COFは機械的刺激を受けると電子正孔対を生成し、水分解のための高効率のピエゾ触媒となる。研究チームは機械的エネルギーを使って、金属を使用しない、コスト効率や生成率の高い水素ガス生成システムを開発することにより、多孔性不均一系触媒をベースにしたグリーン水素の新たな道を切り開いた。

金属を含まないドナー・アクセプターベースの共有結合性有機構造体によるピエゾ触媒水分解の模式図
(出典:PIB)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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