オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は7月9日、セルビアのジャダル渓谷で2004年に発見され、2006年に新鉱物として認定されたリチウムとホウ素を豊富に含む希少鉱物ジャダライトが、グリーンエネルギーへの移行を支える重要資源として注目されていると発表した。研究成果は学術誌Nature Geoscienceに掲載された。

セルビア自然史センターに展示されているジャダライト
Credit: Wikimedia Commons (出典:CSIRO)
ジャダライト(LiNaSiB3O7(OH))は「地球のクリプトナイトの双子」とも称される希少な鉱物で、その化学組成は映画「スーパーマン リターンズ」に登場する架空の鉱物クリプトナイトと類似している。映画のように超能力こそ持たないが、紫外線下でピンクがかったオレンジ色の蛍光を発し、産業的にはリチウムとホウ素の供給源としてきわめて有望である。オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)のマイケル・ペイジ(Michael Page)氏は「ジャダライトは超自然的な力はないが、リチウムとホウ素の重要な供給源として大きな可能性を秘めています」と語る。発見されたセルビアのジャダル鉱床は、世界最大級のリチウム鉱床の1つとされ、脱炭素社会への移行を支える資源として国際的に注目されている。
ANSTOは、地質調査を担うオーストラリア地質調査所とCSIROと共に、オーストラリア重要鉱物研究開発ハブの中核機関の1つだ。研究開発ハブは産業界を含むオーストラリアの研究開発エコシステムをより緊密に連携させ、重要鉱物へのアクセスと活用を促進し、オーストラリア国内および世界におけるバリューチェーンを強化することを目的としている。ANSTOではスポジュメンやリピドライトに加え、ジャダライトのような鉱物からバッテリー用リチウム化学物質の生産が進められており、オーストラリアの鉱業がグローバルなエネルギー転換の課題に対応するための必要な支援を提供している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部