インド科学技術庁、2020-2021年度「年次報告書」を公表②

2021年6月25日 西川 裕治(元 JST インドリエゾンオフィサー)

インド科学技術省・科学技術庁(Department of Science and Technology: DST)が2021年2月、2020-2021年度「年次報告書」(Annual Report 2020-2021)を公表した。今回は、DSTが実施する二国間研究事業・プログラムについて紹介する。

参考:インド科学技術庁、2020-2021年度「年次報告書」を公表①

2.1.2 二国間研究事業・プログラム

この章では、①アフリカ、②豪州、③オーストリア、④ベルギー、⑤ベニン、⑥ブラジル、⑦ブルガリア、⑧チェコ、⑨エジプト、⑩ドイツ、⑪ハンガリー、⑫イスラエル、⑬日本、⑭メキシコ、⑮ノルウェー、⑯ポーランド、⑰ポルトガル、⑱ロシア、⑲南ア、⑳スリランカ、㉑スウェーデン、㉒英国、㉓米国との二国間協力ベースでの共同事業等が紹介されている。今回はそのうち、主要先進国のドイツ、イスラエル、日本、ロシア、スウェーデン、英国、米国との取り組み、さらに二国間産業研究開発プログラムなどは以下のとおり。

<各国との二国間の取り組み状況>

ドイツ:

インドとドイツのプログラムでは、学生と教員の交流をサポートする2つの大きなカテゴリと、それぞれインドDST-DAAD(ドイツ学術交流会)とDST-DFG(ドイツ研究振興協会)によって運営される、より大規模な研究協力を行う2つのカテゴリがある。

科学技術分野全体での学術交流を求めるDST-DAADの呼びかけの下で、16のプロジェクトが推奨され、計63の共同プロジェクトが受理された。 共同評価の後、16のプロジェクトが、相互に関心のあるさまざまな分野、すなわち、がん細胞治療、工学材料、および生物医学的応用のためのコンピューター支援イメージングなどについて、DSTとDAADによる支援が推奨された。そして、さらにサポートを求めるために、DSTとDFGは物理学、化学、数学の基礎研究の公募を開始し、65の共同プロジェクトが受理され、共同評価の結果、ナトリウムイオン電池、モチーフ代数的トポロジー、新素材用の安定化クラスターアセンブリなどに関する4つのプロジェクトの実施が推奨された。

イスラエル:

インド・イスラエル共同研究協力プログラム(IIJRC)-2020-2022の下で、

  1. (i) 次世代の太陽エネルギーの利用と貯蔵のための先端材料
  2. (ii) イメージングと通信を感知するための量子デバイス分野

での共同公募が発表された。そして、受理された54件のプロジェクトのうち、計8件のプロジェクトの支援が推奨された。「1型糖尿病の潜在的な治療法としての骨髄MSC由来のエクソソームの探索」というタイトルのプロジェクトでは、間葉系幹細胞とその派生エクソソームが、1型糖尿病の治療のために正常に分離および特性評価がされた。「縦方向の電子健康記録における自閉症の軌跡の分析」というプロジェクトでは、1件の特許が出願された。

最適なレベルのセキュリティを備えた64ビットブロック暗号を使用するCOMETと呼ばれる認証付き暗号化のファミリーは、「疑似ランダム関数の構築とその暗号化への応用」というプロジェクトの下で設計された。

日本:

日印共同科学プログラム2020-2022では、139の共同プロジェクトと共同ワークショップのうち、計20の共同研究プロジェクトと4つの共同セミナーの支援が推奨された。それらは、物理・化学システム、基礎科学的・工学的材料システム、工学・プロセス自然システム、生物学・生命科学・グローバルシステム、地球空間・海洋・環境・数学・計算科学分野のものである。2021年から23年の間に計98のプロジェクトが受理され評価中である。

日印科技合同委員会では、以下の分野で新たな活動や科学技術協力プログラムが提案された。すなわち、ニュートリノ物理および天体物理、量子技術、ナノテク、水素・経済、日印中核研究拠点(COE)、STEMにおける女性活躍・活用、および高齢者支援・持続可能な開発目標(SDGs)の研究イニシアチブである。

ロシア:

スタートアップと中小企業による共同イノベーションを求める初のDST-FASIEコール(公募)が開始され、約30のインドとロシアの企業から提案があった。提案は、双方向的に社会的および経済的インパクトを目指して、「科学技術・イノベーション」(STI)の介入による共同イノベーション・商業化を目指すものである。

両国のテクノロジーパーク間のオンライン交流も促進され、両国からの技術による課題解決を促進した。インド-ロシア 技術評価・商業化加速プログラムの下で受け取った応募案は、評価プロセス中である。

科学技術協力に関するインド・ロシア合同作業部会の第11回会合は、2020年12月17日にオンラインプラットフォームを通じて開催され、インドDSTの国際協力部部長とロシア側の科学教育省 科学・科学技術政策局の副局長が共同議長を務めた。双方は、両国間のSTIにおける協力のためのロードマップについて協議し最終決定した。ワーキンググループは、科学、技術、イノベーションにおける協力の新しいプログラムを作成する必要性を確認した。双方はまた、2021年から22年に実施される二国間活動の共同計画を策定し、提案の共同公募を開始することで合意した。

スウェーデン:

インドとスウェーデンの科学技術協力の下で、両国によって運営されている2つのチャネルがあり、1つは基本的な研究開発支援で、もう1つはスウェーデンのリサーチ・カウンシル、教育研究省、イノベーションシステム庁 (VINNOVA) との、より応用に焦点を当てた研究である。

アディティブ マニファクチャリング(付加製造技術)、生体関連材料、クラウドベースのインテリジェント情報システムなどに関する108件の提案(応募)のうち、計20件の共同提案の支援が推奨された。

DST-Swedish VINNOVAの下で、産業化研究開発プログラムに関する新しいプログラムが今年開始され、より多くの産業化研究開発に焦点を当てたスマートシティ、クリーンテクノロジー、モノのインターネット(IoT)とそれらの影響に関する共同公募が開始された。そして、33 件のプロジェクトが受理され、合計4件が選ばれて支援が推薦された。

英国:

インドとUKIERI (英国-インド教育研究イニシアチブ)は、サイバー・フィジカルシステム、水管理、手頃な価格のヘルスケア、最先端製造、廃棄物設計に関する共同ワークショップの公募を発表した。科学的メリット、両国の国家的な優先事項、プロジェクト・コーディネーターの科学的強みに基づいて、受理された92件の提案のうち、計16件の提案の支援が推奨された。4つのワークショップ(うち対面1件、オンライン3件)が開催される。進行中の54件の共同研究プロジェクトを支援された。2021年3月には、インド英国の54の研究パートナーシップの成果の評価を実施し、将来の活動計画を立てるためのインド英国のショーケースワークショップが開催される。

米国:

米国とインドの戦略的エネルギー パートナーシップ閣僚対話 (SEP)の取り組みとして、DSTのSEPへの関与に関する二国間対話が、2020年7月17日にオンラインで開催された。これは、エネルギー効率化、石油・ガス開発と貿易によるエネルギー安全保障、再生可能エネルギー開発、持続可能で包括的な成長促進、高度なクリーンエネルギーの研究と民生用原子力エネルギーにおける協力を含むものである。

DST長官は、進行中のPACE-R活動(スマートグリッド)と、クリーンコールテクノロジーや炭素回収の利用・貯留などの将来の協力分野について発表した。

人工知能、スマート・コネクテッド・コミュニティ、およびその他の未来の産業における科学および工学研究における協働可能性を調査するためのG2Gの取り組みについて、アメリカ国立科学財団 (NSF)-DSTにより、計画&戦略グループが組織された。

<二国間産業研究開発(R&D)プログラム>

二国間産業R&DプログラムはDSTによって支援され、「グローバル イノベーション & テクノロジー アライアンス」(Global Innovation & Technology Alliance:GITA)を通じて実施される。現在、活発な二国間プログラムは、カナダ、フィンランド、イスラエル、イタリア、韓国、スペイン、スウェーデン、英国の7つの主要国と協力して実施されている。

各国の産業におけるイノベーターによる、社会的・技術的ニーズに応じて選択された多数の重点分野でのイノベーティブな製品と技術開発の申請が奨励された。二国間プログラムは、より広い市場範囲により開発された製品・技術の商業化の見通しを強化することに加えて、重要で持続的な知識と知的財産移転のシーズとして機能することとなる。

終了したプロジェクトでいくつかの成功事例を紹介する。

  1. (i) インドとカナダの共同産業 R&D プログラムに基づく、再生可能な電気自動車の追加とその統合 (PARVATI)
  2. (ii) インドとイスラエルの共同産業 R&D プログラムに基づく、インドの緑内障治療のためのMIM技術による手頃な価格の手術装置の開発と臨床評価
  3. (iii) ロボットEndotrainerの設計と開発
  4. (iv) シップデッキ操作のための翼モーフィングコンセプトを備えた、次世代の堅牢で再構成可能な固定翼UAV
  5. (v) インド-韓国共同応用研究開発プログラムに基づく、自律型水陸両用無人航空機およびUAVに搭載可能な水中用途における水採取装置の設計と開発
  6. (vi) インド-スペインの産業研究開発協力プログラムに基づく、高速バス輸送の効率的な計画とスケジューリング

「インド-イスラエル産業研究開発および技術革新基金 (I4F)」

インド-イスラエル産業研究開発・技術イノベーション基金 (Program India-Israel Industrial R&D and Technological Innovation Fund:I4F)は、インドDSTおよびイスラエルの間の協力プラットフォームである。イスラエル政府のイノベーション庁(Israel Innovation Authority:IIA)は、インドとイスラエルの企業間の共同産業 R&D プロジェクトを促進し支援する。これは、商業化の促進と両国の利益につながる。

このプログラムでは、3年間で6件の公募が実施され、9件のプロジェクトが資金援助を受けた。つまり、両国の18社がこの基金を活用して、世界市場向けの最先端の技術製品を開発した。この基金は、エネルギー、水、農業、ICT、ヘルスケアなど、両国のそれぞれの専門知識、相互利益、社会的ニーズに焦点を当てた分野での申請を募集している。「地下水帯水層の監視と対象を絞ったスマート地下水管理による農業ポンプのエネルギー効率」という1つのプロジェクトが「I4F」の下で完了した。

DSTとイスラエルイノベーション庁は共同で4000万米ドル(約44億円)の「I4F」を創設し、5年間にわたって双方から対等な拠出を行った。

重点分野)
水、農業、ヘルスケア、エネルギー、ICTの5つの分野。
助成金)
共同研究開発プロジェクトは、インドとイスラエルの政府によって共同出資される。
イスラエルの組織)
イスラエル イノベーション庁は、プロジェクトごとに最低125万米ドルから最高250万米ドル、またはイスラエルのプロジェクトコストの50%のいずれか低い方を支援する。
インドの組織)
DST-GITAは、プロジェクトごとに最小125万米ドルから最大250万米ドル、またはインドのプロジェクトコストの50%のいずれか低い方を支援する。
参画機関の負担:
両国の産業界のプロジェクト・リード機関は、プロジェクトに両国のコストのうち最低50%の支出をする必要がある。両国の政府は、条件付き助成金の形でプロジェクトに最大50%の財政支援を提供する(成功度合に応じて、助成金の額までをロイヤリティの形で返済)。

DSTとスペイン産業技術開発センター(スペイン経済競争力省 研究開発・イノベーション担当事務局)による共同プロジェクト

両者により、両国の科学技術ステークホルダーによるイノベーション主導研究と技術開発の促進・資金提供のための共同メカニズムを推進し、ならびに相互に関心のある分野におけるパートナーシップ促進およびビジネス主導の研究開発イノベーションを奨励するために、共同研究開発の公募を発表した。

共同プロジェクトの公募は、食料・農業技術、クリーンテック(エネルギー・環境・水)、製造技術、スマートシティ(持続可能な都市と輸送ネットワーク)、および電子システム設計と製造(ESDM)の分野で実施され、計6 件の提案について、評価プロセス中である。