2023年06月
トップ  > 韓国科学技術ニュース> 2023年06月

相転移工学でペロブスカイト太陽電池の欠陥を効果的に除去 韓国

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は4月18日、同大学と韓国化学研究院(KRICT)、忠南大学校(Chungnam National University)の共同研究チームが、ペロブスカイト太陽電池(PSC)の変換効率と安定性の向上につながる、相転移工学を用いた効果的な欠陥不動態化(defect passivation)方法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Energy & Environmental Scienceに掲載された。

PSCの安定性と効率を改善するには、ペロブスカイト薄膜表面の欠陥を取り除くことが重要であると考えられている。しかし、溶媒に溶かした添加剤を表面に塗布する従来の不動態化処理には、溶媒の蒸発により添加剤が凝固し、欠陥の除去に支障をきたす問題があった。

POSTECH化学工学科(Department of Chemical Engineering)のパク・タイホ(Park Taiho)教授らが率いる研究チームは、ギ酸アルキルアンモニウム(alkylammonium formates:AAFos)という添加剤を用いた、PSC表面処理の新たな工学手法を開発した。AAFosは陽イオンと擬ハロゲン化物陰イオンを含み、比較的低温でも液体の状態を保つ。

チームはAAFosの固体から液体への相転移を利用して、ペロブスカイト薄膜表面の欠陥を効果的に除去できることを発見した。さらに陽イオンの長いアルキル鎖によりペロブスカイト層への水分の浸透が防がれ、水分に対する安定性が向上することもわかった。

実験の結果、AAFosを用いたPSCは25%の真性変換効率と、世界最高レベルとなる80.77%の曲線因子(fill factor)を達成した。

この研究成果は、次世代太陽電池としてのPSCの地位を確立することにつながる可能性がある。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る