2023年04月
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ペロブスカイト薄膜でプリンタブルマルチエネルギーX線検出器を開発―豪、疾患診断や爆発物検出での利用に期待

オーストラリア研究会議励起子科学分野のセンター・オブ・エクセレンス(ARC Centre of Excellence in Exciton Science)は4月3日、同センターに所属するモナシュ大学(Monash University)の研究者らが、印刷技術で作製可能な(プリンタブル)ペロブスカイト薄膜のダイオードを用いた、高感度で柔軟性の高いマルチエネルギーX線検出器を開発したことを発表した。研究成果は学術誌Advanced Materialsに掲載された。

(提供:ARC Centre of Excellence in Exciton Science)

軟X線と硬X線の両方のX線領域を用いるマルチエネルギーX線検出器は、乳がん検査等で必要とされている。しかし、シリコンやセレンを用いた既存のマルチエネルギーX線検出器は、エネルギー感度と空間分解能が限られていた。

次世代太陽電池材料として注目されているペロブスカイトを用いたこの新たなマルチエネルギーX線検出器は、既存のマルチエネルギーX線検出器よりはるかに広範囲な0.1~数十キロ電子ボルト(Kev)のX線で動作する。

これはペロブスカイトを軟X検出に用いた初めての例となる。この検出器は薄膜として作製されるため、柔軟性のある基板と組み合わせることでさまざまな形や大きさに対応できる可能性がある。

論文筆頭著者のババール・シャビール(Babar Shabbir)博士は「この検出器はリアルタイムの検出を可能にし、疾患の診断や爆発物の検出、食品汚染の検査といった複雑な画像検査に利用できる可能性がある」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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