第4次産業革命時代における韓国の科学技術―⑦指標で見る韓国の科学技術の現状

2023年3月28日 JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー 松田侑奈

本コラムでは、第4次産業革命時代を勝ち抜くため、韓国が2017年頃から今日にかけて、どのような戦略を立ててきたのかを紹介してきた。また、現政権である尹錫悦政権の国政課題 1とR&D予算、科学技術情報通信部の課題等 2も合わせて発信してきた。

では、これらの一連の政策・戦略を踏まえての、韓国の科学技術の現状はどのレベルになっているのか。まずは、各種科学技術指標を用いてみていこう。

なお、科学技術はロングスパンでの事業のあるため、コラムでの内容が主に文在寅政権と尹錫悦政権の政策・事業を取り扱っているとはいえ、現状や成果はとある一政権によるものではなく、歴代政権が行ってきた努力の積み重ねであることを予め断っておきたい。

(1)研究開発費

2021年基準、韓国の研究開発費は、前年比9.7%成長し、102兆1,352億ウォンと、遂に100兆ウォンを突破した。研究開発費は世界5位である。国の規模や人口等に鑑みれば、この金額と順位は決して低いものではない。1963年12億ウォンからスタートした韓国は、1985年に初の1兆ウォン突破を果たし、1990年から大幅な成長を重ねてきた。1990年は3兆2,150億ウォン、1996年は10兆8,781億ウォン、2000年には13兆8,485億ウォン、2006年は27兆3,457億ウォン、2012年は55兆4,501億ウォンと右肩上がりの成長を続けてきた。

また、研究開発費が国内総生(GDP)で占める割合は4.96%と世界2位まで成長した。政府のR&D予算も年々増加傾向にあり、2023年には30兆ウォンを突破した。

韓国が、研究開発に積極的に取り組んでいることは、これらの指標から十分に伺える。

図1 韓国の研究開発費の推移
(出典:NTIS科学技術統計)

図2 韓国政府のR&D予算
(出典:KISTEP「政府研究開発予算現状分析」)

(2)研究者

韓国における研究者の数も、研究開発費の増加傾向に比例しているが、毎年2万人程度が増え続けている。2021年の研究者数は586,666人と前年比5.1%増加した。FTE(フルタイム換算)研究者も470,728人と前年比5.4%増加した。研究者の総数では研究開発費と同様に世界5位である。FTE研究者は2020年までは5位であったが、2021年にはドイツを抜いて、中国、米国、日本を継ぐ4位となった。経済活動人口1000人あたりのFTEは16.7人、人口1,000人あたりのFTEは9.1人といずれも世界1位である。すなわち、韓国は人口比研究者がもっとも多い国である。研究者のうち企業に属している人は82.9%、大学9.3%、研究機関7.8%となっている。主要国に比べると企業に所属している研究者が多いといえる3

図3 韓国の研究者数の推移
(出典:NTIS韓国技術統計)

(3)論文・特許等

韓国の論文の数も、研究開発費や研究者の増加につれ、増加傾向にある。下記図4の通り、2011年の段階では、日本の半分程度に過ぎなかった論文数が、2020年にはその差を20%以内に縮まった。世界における論文数の順位は、2007年から12位をキープしている。

また、日本の文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の「科学技術指標2022」によれば、論文の質を図る指標である、TOP10%補正論文数 (2018~2020平均、分数カウント)では、韓国が日本を追い越し11位となった。韓国が日本より上位になったのは初めてあり、論文質での飛躍が目立つ。

図4 日本と韓国の論文数の推移
(出典:NTIS韓国技術統計)

図5 TOP10%補正論文数
(出典:NISTEP科学技術指標2022)

特許の出願数・登録数も2017年以降増加傾向にあり、2019年の三極特許件数は3,057件で世界5位だった。特に衣類管理機器 4分野での特許出願数は世界1位で、LG電子、サムスン電子、COWAYが世界市場を主導している。コロナの影響により、健康・衛生面での関心が高まり、服を手間かけずに綺麗に保てる衣類管理機器が大人気となり、国内市場の規模は2015年の294億ウォンから2020年には3,937億ウォン13倍も増加し、元々3カ国のみで販売されていた機器は2020年時点には20カ国に増加した。統計庁のデータによれば、IP5で衣類管理機器の特許出願数は、2011~2019年の間、年平均27%の成長を果した。

図6 韓国の特許出願数・登録数推移
(出典:NTIS科学技術統計)

以上、いくつかの指標で、韓国の科学技術の現状を見てきた。これらの指標だけで韓国の科学技術レベルを全部表すには限界があり、韓国が強みを見せている技術分野や世界各シンクタンクによる評価等をより詳細な検討は、調査報告書「第4次産業革命時代における韓国の科学技術」で行っていく。

ただ、確実にいえることは、韓国は、憲法127条で国家が科学技術のイノベーションに努める義務を定めるほど、科学技術を重視する国であり、5年に一度「科学技術基本計画」と「科学技術人材育成・支援基本計画」を制定し、科学技術に関わる諸事業の推進と人材育成に注力している。韓国政府の科学技術への惜しみのない投資と諸政策により、研究者の数は増加傾向を保っており、論文・特許等も量的・質的発展を見せている。そして、尹錫悦政権も先端技術の確保を通じて他国との格差を広げることを科学技術における一大目標としているため、科学技術への投資や人材育成への重視は今後も継続されると思われる。

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